Se connecter「――というわけで、フィオナから『封印塔の調査』を頼まれたんだ」
セリウスが説明を終えると、全員の視線が一斉に集まる。「おいおい、また怪談かよ! お前とアランは、この前も鎧とか肖像画とかで大活躍したばっかじゃねえか! 今度は俺も参加するぜ」
リディアが両手を振り回して大げさに叫ぶ。「つまり……三連続で『学園の七不思議』ってわけですね」
レオンは呆れ顔でため息をついた。「ふむ。封印塔……古の邪悪が眠る禁忌の地……いいじゃないか!」
オルフェはすでに剣を肩に担ぎ、やる気満々。 「こういうのは勇敢な戦士が挑むべき試練だ!」「いやいや、オルフェはただ怖い話に首突っ込みたいだけでしょ」
アランが冷静に突っ込む。 「でもまあ、フィオナが本気で困ってるなら、無視はできないかな」「う、うん……そうなんだ」
セリウスは曖昧に笑う。「よーし決まりだな! 封印塔に突撃だ!」
リディアが拳を突き上げる。「ちょ、ちょっと! まだ行くとは――」
セリウスの制止もむなしく、オルフェとリディアはもう行く気満々。「でも……立ち入り禁止なんですよね」
レオンが冷静に水を差すが、リディアは「バレなきゃ平気平気!」と笑い飛ばす。「ふむ、バレなきゃ無罪!」
「いや有罪だからね!?」 アランとレオンが同時に突っ込む。結局――セリウスの予想通り、話し合いは「みんなで行こう」という結論に収まってしまった。
(やっぱりこうなるのか……)
セリウスは心の中で天を仰ぐ。 それでも、仲間たちがいてくれる安心感も確かにあった。午後の授業を終えた六人は、裏門を抜けて封印塔へと向かった。
まだ日は高く、空には淡い光が広がっている。だが森の外れに建つその塔は、昼であるにもかかわらず薄暗く、不気味な影を落としていた。「……うわ。思った以
五人がさっきの通路へ戻るとそこにスケルトンはいなかったが、今来た道の背後から、湿った空気を切り裂くように、がしゃり、がしゃりと乾いた音が押し寄せてきた。 どうやら前の道は通れないとみて、こっちの道から追いかけてきたようだ。 狭い通路の奥、ランタンの灯りの端に白い影が揺れ、やがてスケルトンの列がずらりと現れる。「……数、けっこういるな」 アランが低く呟いた。 視界の限りでも十体以上、さらに奥から続々と現れている。「けど、まとめて来られるわけじゃねぇぜ。この通路なら出口で袋叩きにできる」 オルフェが大剣を振りかぶり、足を踏ん張る。 「よし、俺が正面で壁になる!」「じゃあ、俺はその右側から援護だな」 セリウスが長剣を抜き、オルフェの右を守る位置に立つ。「俺は通路の右端、セリウスの横だ。骨どもを短槍で狙ってやるさ」 リディアが短槍を構え、素早く位置を取った。「僕は……左の端」 レオンが息を整え、長槍を構える。レオンの右にはアランが陣取った。 やがて最前列のスケルトンが金属音を立てて剣を振りかざし、狭い通路から飛び出してきた。「来やがったなァ!」 オルフェの大剣が唸りを上げ、骨の戦士を粉砕する。 砕け散る音を皮切りに、次々とスケルトンが雪崩れ込む。 アランが鋭く叫んだ。 「崩れるな! 囲みこんで迎え撃て!」 その号令に合わせて、五人は扇のように陣を組む。 刃と骨の衝突音が広間に響き渡り、火花が散った。 オルフェの大剣が横なぎに走り、二体目のスケルトンの胴を粉砕する。砕けた骨が飛び散り、湿った石床に転がった。 だが、後ろから次々と押し出されるように、骸骨の軍勢は途切れなく現れる。「数が多い……!」 セリウスの剣が白刃を閃かせ、迫る槍を弾き飛ばす。間髪入れず逆袈裟に振り下ろし、骸骨の頭蓋を砕いた。「通路が狭いのが幸いだな……!」 リディアは短槍で素早く突き、骨の膝を狙ってへし折る。倒れ
「……空気が違うな。長いこと閉ざされてた場所かもしれん」 アランが低くつぶやく。「こりゃますます怪しいな。罠とかねぇだろうな」 オルフェが冗談めかして言うが、その声には緊張が混じっていた。「罠はおれにお任せだぜ」 リディアが仲間を見渡し、先頭に立つ。 狭い通路は人一人がやっと通れる幅で、天井は低く、湿った石が滴りを落としていた。靴底が水を踏み、ぴしゃりと音を立てる。 奥へ進むにつれて、入り口からの光も見えなくなり、ランタンの光が唯一の頼りとなった。 しばらく歩くと、リディアが再び足を止める。 「……見ろ。壁に刻まれてる」 ランタンの明かりに照らされ、苔むした石壁に古い文字のような彫り込みが浮かび上がった。擦れて判読は難しいが、円形の紋章と、骸骨のような図形が描かれている。「こりゃ……不吉な感じだな」 オルフェが眉をひそめる。「魔術的な封印かもしれない」 アランが険しい表情を見せた。 レオンはおそるおそる近づき、指先で石の表面をなぞった。 「……何かの封印結界の痕跡ですね。でも……完全に消えてます。だいぶ昔に解除されたものかと」「それでスケルトンがたくさんいるのか? 何とか封印結界を復活できないのかな」 セリウスが呟き、仲間の顔を見渡す。 レオンの指先が石壁をなぞり続ける。古い線刻の奥には、まだかすかに魔力の残滓が漂っていた。 「……やっぱりだ。この魔法陣、スケルトンを呼び出す源を封じたものみたいです」「つまり、この壁の向こうに何かがいるってことか?」 アランが声を潜める。「はい。正確には、居るというより有るですね。スケルトンを呼び出す魔力源……。ここを崩して取り出してみましょう」 レオンの声はかすかに震えていた。 アランは即座に判断を下す。 「壊せるのか? 岩じゃないのか」「一見、岩のように見えますが、固まった土と言ってよいでしょう。きっと掘れるはずですよ。たぶん大きな魔石のようなも
轟音が地下空洞に木霊した。 スケルトンの群れが、一斉に突撃を開始したのだ。 甲冑の擦れ合う音、骨のぶつかる音、剣を振るう金属音……それらが渦を巻き、押し寄せる怒涛の波のように迫ってくる。「走れ!」 アランが剣を振り抜き、追いすがる一体の首を斬り飛ばす。 乾いた骨の山を蹴散らしながら、仲間たちは必死に階段を目指した。「《ライトニング・ボルト》!」 レオンの詠唱と共に、魔導書が眩い閃光を放つ。 雷撃が直線状に走り、十体近くのスケルトンをまとめて薙ぎ払った。 骨が黒焦げになり、甲冑が爆ぜる音が響き渡る。「いいぞ、レオン!」 オルフェが大剣を振り回し、崩れかけたスケルトンを叩き潰した。 だが、数は減ったようには見えない。むしろ波のように押し寄せてくる。「くっ……振り返るな! ひたすら走け!」 セリウスが仲間を鼓舞する。 背後では、リディアが必死にランタンを掲げ、暗闇を照らし続けていた。「この数……本当に終わりがあるのか!?」 オルフェが歯を食いしばる。 アランが冷静に叫ぶ。 「時間を稼ぐしかない! レオン、もう一発撃てるか!」「やってみます!」 レオンは震える指先で魔導書のページをめくり、再び詠唱に入った。 「――雷よ、奔れ! 《チェイン・サンダー》!」 雷光が連鎖し、骨の軍勢を次々と貫いた。 火花が散り、暗黒の広間が一瞬だけ昼のように照らし出される。 しかし、焼き切った骸骨の後ろから、さらに無数の亡者が這い出してくる。「まだだ、止まらない……っ!」 レオンが額から汗を滴らせ、よろめく。 アランが彼を支え、声を張り上げた。 「今のうちに階段を登れ! 俺とオルフェで食い止める!」「馬鹿言うな、全員で逃げるんだ!」 セリウスが反論するが、もう選択の余地はなかった。 スケルトンの軍勢はす
倒れた黒騎士の残骸を踏み越え、セリウスたちは祭壇の周囲を調べ始めた。 瓦礫に埋もれた一角で、オルフェが金属を叩くような音を響かせる。「おい、こっちに来てみろ!」 瓦礫をどけると、黒ずんだ鉄の宝箱が現れた。 鎖で厳重に縛られ、表面には古代文字のような刻印が施されている。「罠かもしれん。慎重にな」 アランが剣を構えて警戒し、リディアが屈み込んで鍵穴を覗き込む。「……ふむ、魔力の封印付きだな。けど、そう強力な仕掛けじゃない」 器用に工具を差し込み、かちりと音を鳴らす。 鎖が解け、箱の蓋が重々しく開いた。 ――ぱあっ。 中から光が溢れ出し、洞窟の壁を黄金色に照らす。 中に収められていたのは、煌びやかな装飾を施された指輪と、青白く輝く魔石だった。「こ、これは……!」 レオンが思わず手を伸ばす。 「きっと古代の魔導具ですよ。外に出たら鑑定士に見てもらいましよう!」「本物の古代の魔導具か!? こんなところに、そんなお宝が眠ってるのかよ……!」 オルフェが目を丸くする。 セリウスは宝を手に取ると、仲間たちに視線を向けた。 (もしかしたら、『性転換の魔道具』かもしれない。いや、そんな簡単に出会えるはずはないか……) 「分け前は帰ってから相談しよう。今は、無事に生還するのが先決だ」 五人は互いに笑みを浮かべ、束の間の達成感に浸る。 しかし、その背後で――祭壇の割れ目から、墨のように濃く黒い液体がじわりと滲み出していた。 じわり、と祭壇の割れ目から滲み出した黒い液体は、やがて土に吸い込まれることなく、地表を這うように広がっていった。「……なんだ、これ」 オルフェが剣先で突こうとした瞬間、液体はしゅうっと煙のように揮発し、消え去った。「魔力の残滓……?」 リディアが険しい顔で呟く。 アランが胸で腕を組み眉根を寄せる。 「黒騎士を倒したことで、別の何かが目覚めた可能性があるかもな」
祭壇から噴き出す瘴気がさらに濃くなった。 その中で、ひときわ大きな影がゆっくりと立ち上がる。 ――ガシャリ。 全身を黒ずんだ甲冑で覆い、両手には大剣を握った巨躯。 眼窩には紅蓮の光が燃え、普通のスケルトンとは明らかに異なる威圧感を放っていた。「っ……でかい……!」 オルフェが思わず息を呑む。 「こいつ、他の骨とは違うぞ!」 黒鉄のスケルトン――その剣がゆっくりと持ち上がると、周囲の骸骨たちが一斉にひれ伏した。 まるで王を讃える兵のように。「……隊長格か、それとも守護者か」 アランが歯を食いしばる。 「どちらにせよ、あれを倒さなきゃ祭壇は壊せない!」 黒騎士スケルトンが低く唸るように顎を震わせ、大剣を地に叩きつけた。 ドン、と震動が走り、周囲の骨がバラバラと組み上がり、新たな兵が立ち上がる。「また呼び出した!?」 リディアが舌打ちする。「雑魚はレオンとリディアで抑えてくれ! 私とセリウス、オルフェは正面の黒騎士スケルトンだ!」 アランが即座に指示を飛ばした。 「援護は任せた!」「行くぞッ!」 セリウスが咆哮し、仲間たちが一斉に突撃した。 黒騎士の大剣が横薙ぎに振るわれる。 セリウスとアランが同時に剣を交差させて受け止めるが―― ガギィィィィンッ! 凄まじい衝撃に、二人の足が床を滑り、石畳に亀裂が走った。「おっ……重すぎる!」 「根性で……押し返す!」 オルフェが背後から渾身の一撃を叩き込む。 しかし黒騎士の甲冑は厚く、火花を散らすだけで傷一つつかない。「ちっ……ただの骨じゃねぇな!」 その隙に、リディアの投げナイフが飛び、黒騎士の眼窩を正確に撃ち抜く。 だが、紅蓮の光は一瞬揺らめいただけで、すぐに燃え盛るように戻った。「効かない……!?」「核があるは
四体のホブゴブリンを退けたあとも、五人は足を止めなかった。 通路は次第に狭くなり、やがて下り階段が姿を現す。苔むした石段を降りるにつれて、空気は一層冷たくなり、吐く息が白く濁るほどだった。「……寒い。ここ、さっきまでと全然違う」 リディアが両腕をさすりながら周囲を見渡す。「空気が淀んでるな。湿気じゃなく……死んだものの匂いだ」 アランが険しい目で言った瞬間――。 カラン……カラン……。 通路の奥から、不気味な金属音が響いた。 それは規則的で、まるで兵士の行進のようだった。「おい……聞こえるか?」 オルフェが大剣を構え直し、低く唸る。 やがて闇の中から現れたのは、骨と錆びた甲冑。 生者の肉を持たず、眼窩に青白い光を宿した骸骨の兵士――スケルトンだった。「なっ……骨が、動いてる……?」 レオンが目を見開く。震えが声に混じっていた。 スケルトンは剣と盾を構え、ぎこちなくも迷いのない足取りで迫ってくる。 その姿はまさしく、死してなお戦場に立つ兵士。 ――そして、その空洞の眼窩がギラリと光り、通路の奥からこちらをまっすぐに捉えた。 「……見つかった!」 セリウスが息を呑む。青白い光が、彼らの存在を敵と認識した証だった。 骨の擦れる不気味な音を立てながら、スケルトンは一斉に顔を上げ、盾を鳴らして前進を始める。 その光景に、背筋を凍らせるほどの殺意がはっきりと伝わってきた。「くるぞ!」 アランの叫びと共に、最前列のスケルトンが斬りかかってきた。 ガキィィンッ――! 鋼と鋼が打ち合う甲高い音が、冷たい石壁に反響する。 セリウスが長剣で受け止めたが、衝撃は生者の武人と変わらぬ重みを持っていた。「うっ……重い!? ただの骨じゃない……!」 刃を押し返そうとするが、骸骨の兵士は眼窩の光を揺らめかせ、無感情のまま押し込んでくる。 その隙を突くように、後方から別のスケルトンが







